制作会社に勤めながらフリーでweb制作は労働法違反!? 知っておきたい「競業避止義務」
見出しでドキッとした方は、きっとweb業界の人だと思います。「web制作会社に勤めながらフリーでweb制作していることが違反なんて嘘だろ・・・?」って気もしますが、いちおう本当の話です。正しくは「場合によって違反」となる、という感じです。まあ基本的には大丈夫なのですが、念のために知っておいた方が賢明だとは思います。
目次
Web制作会社に勤めながらフリーでweb制作している人は労働法違反!? 知っておきたい「競業避止義務」のこと
競業避止義務とは?
競業避止義務(きょうぎょうひしぎむ)とは、wikipedia先生より引用しますと下記の通りです。
労働法においては、競業避止義務とは次のような概念である。
在職中に使用者の不利益になる競業行為(兼職など)を行なうことを禁止すること
一般の企業において、従業員の退職後に競業他社への就職を禁ずることを定めた、誓約書や就業規則に含まれる特約(競業禁止特約ともいう)
要約すると、「在職中および退職後において、会社側が労働者に対して同じ業界で活動することに制限をかける内容」になっています。
具体的に言い換えれば、「おまえはうちの会社で働いている間、他の仕事をしたら許さねえぞ。それに、うちの会社を辞めたら同じ業界で働くことを許さねえからな?」という、なんともヤ●ザじみた脅迫めいた内容になっています。
正直、とても労働者不利な内容になっており、文字通りに捉えれば、労働者は「会社で働いたら他のことができず、会社を辞めるとやりなおしができない」というものです。会社に忠誠を誓え!という感じですね。まあ会社からすれば、自社の仕事を奪われたり、退職後に社内の情報を同業他社にバレたくなかったりしますので、そのために競業避止義務を使うのは当然ともいえるでしょう。
そんな、あまりに強力な制約を持つ競業避止義務ですが、しかし、これには、ちゃんと制限というものがありますので、安心してください。
競業避止義務の有効性
競業避止義務では、下記の二点が重要となります。
・競業避止義務の有効性の根拠は「企業と従業員の間の契約関係によるもの」
・合理性がないと判断される特約については民法上の公序良俗違反(民法90条)として無効とする
そもそも、契約書に競業避止義務の記載がなければ従う必要はありません。また、契約書を交わしていても、あまりに合理性を伴わない内容であれば守る必要はありません。
合理性とは、たとえば「在職中に知り合った取引相手の仕事をよそに流す(会社でなく、自分に回す)」とか、「その会社を支えるコアな技術情報を、退職後に同業他社へ横流しにする」などです。こういうものであれば、違反として認められます。
逆に、あまりに曖昧な制約の場合、違反として適用されません。たとえば「webの知識は会社で学んだのだから、おまえは今後web業界すべてで働くことを許さない」などは、合理性に欠けますので、適用されにくいでしょう。そもそもweb制作の技術自体、けっこう世間に知れ渡っている特秘性の薄いモノですので、なかなか制限をかけにくいところだと思います。
▼参考記事
http://fashion-hr.com/hr-talks/recruiting_q-a/3806/
そもそも競業避止義務は憲法上、矛盾している?
じつは競業避止義務。そもそも憲法上、矛盾しているという話もあります。
仮に、裁判によって、対象となる労働者が「web業界で働くことを禁ずる」なんて判決を下されたとします。しかし、その場合、憲法で定められている「国民は職業選択の自由を持つ」という項目に違反することになります。国家権力が憲法上の人権を握りつぶすのは憲法違反、というわけです。
そのため、合理性を伴わない場合は、競業避止義務にはそこまで強い制約力を持たないというわけです。
競業避止義務はなんともグレーな存在なのですが、まあ法律自体が色んなところでグレーなのは言うまでもないことです。
実際にあった競業避止義務の話
自分の知り合いがアパレル関係のweb会社を辞める際、「うちを辞めるなら、契約書で交わした通り、おまえは数年間、webの仕事をやれないからな。見つけたらタダじゃおかないから覚悟して辞めろよ」という脅しをした社長がいたそうです。ただ、これも、ちょっと合理性に欠ける内容なので、結果として無視してOKでした。その会社でしか知り得ない情報があり、また他の会社に流れることで致命的な損害を受けるなどあれば別ですが、とくにそういうのもないので、まあべつに、という具合です。
競業避止義務のペナルティーは何?
もし競業避止義務に違反となった場合、違反者は下記のペナルティーを負います。
・退職金の減額
・損害賠償請求
・競業行為の差止め請求
「・・・そもそも退職金なんてねーし・・・!」という開き直りはさておき、損害賠償請求を受けると、それなりのお金にもなりえますし、競業行為の差止め請求を受けると、これまた手痛いペナルティーでしょう。
とはいえ、実行上、訴えられるケースはほとんどない・・・?
ぶっちゃけweb制作会社のどこも多忙なので、費用と時間が膨大にかかる裁判なんか、いちいちやらないでしょう。よっぽど大きい取引相手を奪われた場合は別でしょうが、そんな裁判している暇があったら、さっさと仕事を終わらせて休暇したいってのが本音ではないでしょうか。・・・たぶん。
それに、どちらかというと、IT・webの世界は、競業をどちらかというと歓迎しているような風潮さえあります。たとえば会社側は自分で制作やっているような人を歓迎していたりしますし、そもそも自営をやっていることを知った上で組むケースも少なくないからです。競業避止義務は少し怖いですが、お互いが納得していれば、とくに揉めることはないということです。
個人的に思う明らかな違反ケース
個人的に明らかに違反だなと思うのは、「会社経由で知り合った取引相手の仕事を「私の会社でなく、私個人に流した方が安くてオトクですよ」みたいな提案をして、本来会社が得るはずの業務を奪うような真似をした場合」でしたり、「退職後、前の会社で作ったECサイトを同業他社で全く同じ構成で真似て作ったり・・・」などでしょうか。このへんは、さすがにアウトだと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。基本的には大丈夫ですが、しかし知っておかないと恐い「競業避止義務」の話でした! 就職・転職などの際、競業している時はきちんと事前に話しておき、その上で契約をするのが一番安全です! 会社に隠しておくのは、あまり得策ではないので、最初の契約できっちりしておくようにしましょう!