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申請書類を作成するだけで100万円のコスト!? 「ある大手企業」のムダを打ち明けてみた

今回のブログ記事は、昔、「ある大手企業」に勤めていた時に「これ、超ムダだな」と思った体験談です。

たかだか申請書類を作るだけで、100万円とはどういうことか、順を追って説明したいと思います。

申請書類を作るだけで100万円!? 大手企業のココが無駄!

いったい、どんな書類を作るのか

大手企業メーカーの組織形態は、だいたい本社と工場のカタチになります。そして、今回作る書類は「ある技術に関する許可を省庁よりもらう」というミッションで、下記の図のように「設計が申請したい技術を書類にまとめ、それを工場内部の審査→本社の審査→省庁の審査を通して、最終的に省庁大臣の許可をもらう」という流れになります。(具体的に書けませんので、かなり濁してます。)

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この時、わたしは「ただ書類作成するだけでしょ、楽勝楽勝~」と思っていました。今にして思えば、この油断が完全にフラグでした。

さっそく作成開始

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まずは、設計部内で申請技術内容をまとめます。ここはとくに問題なくスムーズに進みまして、設計内部の出し戻しを含め、作成工数は丸2日でした。過去、他の設計部が省庁に提出した書類を参考にして、書式を仕上げていきます。

ただ、その書類のフォーマットが少し古く、また分からない項目も多かったため、そこは付箋を貼っておき、まとめて内部審査部門へさっさと質問しに行くことに。(本申請書類の許可は、一カ月後までに欲しいものですので、あまり考え込んでもしょうがない。)

内部審査部署で、ビキビキ

ここから話が長くなるので、箇条書きにしていきます。作った書類を持って、内部審査を進めていきます。

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内部審査部署に到着

私「急ぎの案件なんですが・・・」と事情を伝える

内部審査担当A「今忙しいから」と、ガン無視

ろくに話も聞いてもらえない

絶句しかけるが、急ぎであることを強調して書類をなんとか渡す

書類をまったく見ず、汚く散らかったデスクへ無造作にバサっと放り投げる内部審査担当A

内部審査担当Aはおそらく仕事を貯め込むタイプと認識。連日、催促しようと決意する。

翌日、さっそく催促に伺う

内部審査担当A 「まだやってない」の回答

さらに翌日、電話で催促する

内部審査担当A 「きみが取りに来い」との回答

まあ若手だしな、と取りに伺う

内部審査担当A 「このフォーマットを参考に作り直してきて」と、よその部署が作ったフォーマットの参考書類をバサッと渡される。

自分が持っていたフォーマットより古いので、そのことを指摘する

内部審査担当A 「○×▼■○×▼■」(よく理解できない言葉を並べ出す)

翻訳できずに困っていると、内部審査担当Aの上司「内部審査担当B」が現れる

内部審査担当Bに書き方をざっと学ぶ

指摘された箇所を約半日かけて修正し、改めて持っていく

内部審査担当A「おk。後で見とく」(デスクに無造作に投げる)

翌日催促。もちろん無反応。

2日後に反応あり。出向く。

内部審査担当A 「申請書類にはこの書類も必要だったわ。用意してきて」

私「・・・はい」

速攻で作って渡す

内部審査担当A「おk。後で見とく」(デスクに無造作に投げる)

翌日催促。もちろん無反応。

2日後に反応あり。出向く

内部審査担当A 「申請書類にはこの書類も必要だ・・・(ry」

私「おk。すぐ作って戻る(喰い気味)」

2時間以内に作って、持って行く

他の人「あ、内部審査担当Aさんは帰りましたよ(定時)

私「(#^ω^)ビキビキ」

きっと、内部審査担当Aは●●●なのだろうと断定し、自分の上司より内部審査部門へ、ちゃんと仕事を進めてもらえるように圧力をかけてもらうことを決意する。

※以降、伏字の部分に該当する用語は、読者様の好きな言葉で補完して下さい。

圧力の結果、内部審査担当Bが再登場。以降、内部審査担当Bとなるべく作業を進めていく。

だが、内部審査担当Bは役職者で時間が合いにくい+この人もミスが目立ち、進捗悪し

そんなこんなで計3週間ほど、出し戻し

ようやく書類完成(工場内部の許可が完了)

【重要】この時点で、スケジュールギッリギリ

本社の社内審査で、ビキビキ

ドタバタしながらも内部審査が終わり、いよいよ本社へ書類提出して社内審査を進めていきます。以下、箇条書き。

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本社へ書類提出

本社の審査には1週間かかるらしい

1週間待つ

1週間経過しても連絡なし

不審に思い、内部審査部署へ催促しに突撃する

なぜか内部審査担当A&Bが申請書類とにらめっこしている

私「どうしたんですか?」

内部審査担当A&B「いやさ、本社の審査担当に不備があるって出し戻しされたんよね」

【朗報】この時点でスケジュール遅延確定。
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私「(色々飲み込み。)・・・それなら修正しますけど。結構チェックしたと思うんですが、どこか間違ってたんですか?」

内部審査担当A&B「それがさ、おれらにもわかんないだよね」

私「・・・は? ええと、いや、それなら聞けばいいんじゃないですか?」

内部審査担当A&B「いや、ちょっとね・・・あはは」

私「・・・急ぎの案件なんですけど。散々伝えてますよね?」

内部審査担当A&B「それがさ。本社とはちょっと・・・アレがアレでね・・・」

私「いや、意味が分からないんですけど。なんですか、アレって?」

内部審査担当A&B 「まあちょっと待っててよ」

私「スケジュール遅れ確定なんですけど」

内部審査担当A&B 「まあちょっと待っててよ」

以下、for文発動。彼らはRPGの村人CPUとなる。

そもそも・・・本社から返事がきたにも関わらず、その報告を怠る彼ら。

完全に見限った瞬間であった。

それから、村人相手にいくら話しかけたところでイベントは進みようがないので、その場はひとまず任すことにした。(これ以上、何を言っても無駄だと悟った。)

ちなみに、これは後になって分かったことだが、内部審査担当は過去に色々と不備を多発しており、本社の審査部門から都度お叱りを受けていて、とても仲が悪いらしい。

・・・。

仲が悪いから、仕事の話が聞けない・・・?

駄目だコイツら・・・はやくなんとかしないと・・・
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自分の部署に戻って、上司にさっそく報告。

私「あの・・・。私が直接、本社の人に聞いてきたらダメなんですかね・・・?」

上司「・・・内部審査の人たちのメンツもあるだろうからな。やめておいたほうが良い。色々と面倒なことになるかもしれない

この時、上司が発言した「面倒事」の意味は、「内部審査の機嫌を損ねると、設計部の他の人が今後、書類審査をやってもらいにくくなること」を意味する。

それは確かに問題っちゃ問題なのだが・・・いや、仕事なんだからさ・・・機嫌とかマジなのかよ・・・オッサンなのに心は乙女かよ・・・。

ここで、日本企業の縦社会に屈服。現実には、サラリーマン金太郎にはなれないものです。

・・・その後、内部審査担当と本社の戦い(やり取り)は、じつに1ヵ月もの間、続いた。その間、書類のやりとりはたった3回ほど。本社様の書類確認に1週間かかるのだから、仕方のないコトであった。むろん、スケジュールのデッドライン超えていることは言うまでもない。

一向にラチがあかないことに憤りを感じ、いよいよわたしは半ギレになって、独断で内部審査担当を詰問することにした。

私「いや、いつまでもナゾナゾして遊んでないで、なにが間違いなのかさっさと聞けよ」
※注記:あくまで心の声。実際の口調は丁寧な言葉。

内部審査担当B 「・・・はい」(さすがにまずいと思ったらしい声で。)

かくして、内部審査担当から本社担当へ電話をさせることに成功した。最初からキレておけば良かったと、今でも猛省している。

その結果、衝撃の事実が判明することになる。

本社担当「この書類、印刷した時の日付が間違えてるでしょ?」

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説明しよう。

まず、「この書類」とは、申請書類本体のことではない。 「申請書類に付属させておいた、技術内容の説明を補足する参考書類」のことであり、これは内部審査担当が作成しろと言って、後から作成したものだ。そして日付が間違っているのは、その参考書類は最初の提出以来、とくに修正がなかったため、工場内部で無駄な2週間の出し戻しをしている間、他の書類の確認印日付に対して、矛盾が生じてしまったというわけである。

要するに、その書類の日付より前の確認印が存在することはおかしいだろう、という主張。しかし、その書類はあくまでも参考であり、確認リストに入っていない。また、日付はプリンターが自動的に出力したもので、盲点といえば盲点のような項目。)

・・・。

わたしは心底、絶望した。

こんなこと、本社の担当者が最初の戻しをする時、電話を一本するなり、そこに付箋を貼って注記しておけば、一瞬で解決する問題である。それを仲が悪いもんだから、そこだけイジワルして教えなかった、ということだったのだ。たったそれだけのことで、1ヵ月を無駄に浪費した、おそらく年収●00万円以上であろう、エリートサラリーマンたち・・・。

どうやら本社の人間も●●●だったらしい。

なお、本社の言い分は「書類の日付を確認しておくことは社会の常識。そんな基本的なこともできないのか」ということである。まあ、これまでの内部審査部門に対する怒りもあるのだろうし、確かにごもっともな発言ではある。出し戻しの回数が多過ぎたせいとはいえ、気づけなかった自分にも責任の一端はあるのだろう。

だが、そもそもの話で、彼らはまるで分かっていない。どうやら致命的なほどまでに欠落しているのである。そんな常識よりも、さらに常識でなくてはならないはずの社会の超常識、「コスト意識」のことを・・・

申請書類作成のこれまでのコストを振り返ってみる

それでは、本題のおカネの話をしていこう。

まずは、一日の稼働を8hとして、今までにかかったコストをざっくりと試算していく。

▼書類作成 丸2日
・上司:2h
・私:16h

▼設計⇔内部審査 約3週間
・上司:2h(修正の度、確認と印鑑)
・私:24h(修正作業)
・内部審査A&B:10h (彼らの書類確認していた時間は、恐らく少ない)

▼内部審査⇔本社審査 約1ヵ月
・私:6h(修正作業)
・内部審査A&B:24h(なぞなぞ解明)
・本社審査:5h(確認)

合計して、約87h。

BtoBにおける工数の請求単価は、会社や技術分野、それぞれでピンキリだが、大手企業メーカー社員の工数の相場は、人日7万円~10万円といったところである。

つまり、総額にして、76万円~108万円といったところ。

申請書類一式を作成するのに、これだけの工数を使い、制作期間として約2カ月もかかってしまったのである。

・・・なんたる●●●っぷりであろうか。

※タイトルの100万円は少し箇条宣伝でしたが、進捗報告などの時間を含めると、実際はもっと工数がかかっていたようにも思うので、まあ大体の平均値なのだとご容赦頂ければ、助かります。

大事なことは「スムーズにやれば、こんなにコストのかかる仕事ではない」

ちなみに、すべての作業を通してみて、今までの工程は業務改善できる点が非常に多かった。もし申請書類のフォーマットがあり、しかるべき人材が審査部門にいてくれたら・・・わたしの見積ではこうなる。

▼書類作成 丸2日
・上司:2h
・私:16h

▼設計⇔内部審査 2日(戻し1回)
・上司:0.5h
・私:3h
・内部審査A&B:4h

▼内部審査⇔本社審査 2週間(戻し1回)
・私:2h
・内部審査A&B:2h
・本社審査:3h

合計して、32.5h。コストは28万円~40万円程度で、制作期間は約3週間。加えて、普通に仕事してくれれば、オンスケで流れた仕事のはずだったわけである。

ちなみに省庁の審査は問題なしで、一発通過

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とくに戻りもなく、一発通過。やはり省庁は分かっている。省庁の印鑑を見ていると「うまくやれよ」というメッセージまで聞こえてくるかのよう。当時の大臣さんに、称賛の拍手を送りたい気持ちであった。(一応、さんざん出し戻しした成果、ということにしておく。)

一つの結論として、大手企業にはあまり過度な期待をしてはいけない

20代の自分ですら分かるカンタンなことが、どうして錚々たる大企業の先輩に分からないのだろう。分からないはずがないのだ。本当に疑問に思ったものだった。

一方で、年齢を考えると、彼らはなかなか良い給与をもらっているハズである。

給料が、まったく仕事に見合ってない。本気で、そう思った。

少なくとも、こっちは仕事がしたいのであって、ナゾナゾやコントをやりたいわけではない。いわゆる「大人の事情」などといった抽象的かつ曖昧なだけの表現で、これだけの損失が生まれていることは大手企業ならではの●●●さと思わざるを得ない。

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これは、つまらない理由で「ホウレンソウ」を怠ると、簡単に数十万単位の損失が生まれるという好例(悪例)でもある。

内部審査部門の仕事っぷりは、かなり罪深い

そもそも、申請書類の作成なんて、ある程度はルーチン化されるはずのものである。それにも関わらず、最新版のフォーマットは作成されていないし、またきちんと社内共有もされていない。これがどういうことか賢明な読者様は分かっているだろう。

つまり、申請という案件が発生するたび、彼らはいつもそれだけのドタバタを引き起こし、かなりの損失を生み出しているのである。

このように、知識が共有されず、個人の中に眠っている現象を、ナレッジマネジメントの言葉では「暗黙知」と呼ぶ。暗黙知の多い会社ほど、損失が大きい会社と思って、ほぼ間違いない。一時期、技術継承問題が騒がれたが、その問題は今もなお続いているのである。

こんなものは大手企業の氷山の一角

今回の一件は、まったくもって可愛いレベルの話です。おそらくサラリーマンで読んでいる人の多くが「そんなもん、なんでもないよ」と思うでしょう。わたしもそう思います。なにしろ、もっと比べ物にならないほどヤバい話が、社会の至る所にうごめいていますので・・・。(とても書けない。)

ちょっとだけ声を大にして告げておきますと、若い人は大手企業にあまり過度な期待をしてはいけません。もちろん、大手企業には「ものすごく優秀な人」がいることは書いておきます。しかしながら、一方で、「ものすごくハテナマークを浮かべたくなる人物や案件」がありますので、気をつけておいたほうがいいです。この辺の話は、また、そのうちに書きたいと思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか。大手企業の体験談シリーズ、またちょこちょこと更新していきますので、ご興味ある方はブックマークしておいてくださいませ!

あと、最後に、これを書いておきます。

※この話はフィクションかもしれなく、実在の人物・団体とはなんの関係もない可能性がきわめて高いかもしれません。

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