個人事業主が必要経費で節税することは卑怯でズルいこと?
たまに、「個人事業主の人は何でも経費にしまくって税金払わなくて済むから良いよね」と言っている人がいます。
ただ、実際に自分が個人事業主をやってみて思ったことは、「分別をわきまえない経費は確かに卑怯でずるいが、すべてひっくるめて一緒にされるのはちょっと・・・」という感じです。
目次
個人事業主が必要経費で節税することは卑怯でずるいことなの?
確かにずるい人もいるけど・・・
個人事業主の必要経費をずるく使う人とは、ずばり、「事業に関係ない生活費をすべて経費にするようなこと」です。
こういう人は、たぶんまあ・・・確かに存在するのだと思います。
たとえば、自分がファミレスに行った際、隣に居合わせた年配の家族連れが、その明らかな家族の食事というものに領収書を切ってもらっているようなシーンは、自分も見たことがあります。
他にも、仕事というよりは親睦といった趣旨で集まった飲み会において、その代金9万円分くらいの領収書を、さっそうと作って持って行く人も見たことがあります。
また、世の中探せば、もっとピンキリで・・・きっとスゴイことをしている人たちがいるのだとは思います。
確かに、そういう人たちはちょっと・・・っていうのは、自分も思います。
ただ、そういう極端な人たちを例に、すべてまとめて一緒にして、「個人事業主は~」と言うのは、違うように感じます。
必要経費自体は、むしろまともな制度
本来の必要経費の概念は、もっと健全なものです。
打ち合わせで交通費を使えば、当然経費ですし、機材やソフトが必要だったら、それも経費ですし、事業のための書籍だったら、それも経費です。
そして、そういった経費は、青色申告の複式簿記であれば、ちゃんと仕訳して、証票も管理して、すべて記録する作業をしなくてはいけません。
これらの行為は、卑怯でもズルでもなく、ただ単に、正式なルールにのっとって、淡々とやっていくだけの、いわば業務です。
そもそも節税は会社としても取り組んでいるミッション
「節税がずるい」というサラリーマンの方は少なからずいますが、しかし、「節税」自体は、会社としても取り組んでいるミッションのはずです。
法人単位で見ても、稼ぐだけ稼いで、そのまま丸ごと税金を払うのではなく、稼いだお金に応じて、法人の資産をうまく増やすといった考えは、むしろ健全な経営の思考です。
ただ、なんとなく節税がずるいというように否定する方は、法人(会社)から見ても、ちょっと頼りない考えのように感じます。
じつはサラリーマンだって節税はしている
また、「節税」は、いかにも個人事業主だけの特権みたいに主張する方もいますが、サラリーマンだって、節税はできますし、じつはほとんどすべての方が自動的に節税の制度を利用しています。
なぜなら、サラリーマンには「給与所得控除」があるからです。
個人事業主の人は、複式簿記をして、あくせく帳簿づけをして青色申告をすることで、ようやく65万円の控除を受けることができます。
対して、給与所得を得ている方は、記帳などすることなく、なにもせずとも65万円以上もの控除を自動的に受けることができるのです。(おまけに収入次第で、控除額が増えていきます。)
つまり、仮に年間500万円を稼いだとしたら・・・
サラリーマン:何もせずに154万円の控除
個人事業主:青色申告をして65万円の控除
そして、仮に年間800万円を稼いだとしたら・・・
サラリーマン:何もせずに200万円の控除
個人事業主:青色申告をして65万円の控除
というわけです。
さらに、もう一つ。
サラリーマンは年末調整で、保険料の控えなどを提出したりするだけで、会社の経理の人が代理となって、自動的に社会保険料控除など、その他控除の手続きをしてくれて、節税をしてくれるのです。高額な保険に入ったり、家族分の国民年金を支払ったり、サラリーマンでも節税のやり方は色々あります。対して、個人事業主はすべて自分でやらないといけません。
すなわち、労力だけでいえば、サラリーマンのほうが、個人事業主よりもはるかに楽に節税できるのです。そして、サラリーマンは誰しも自動的に節税しているのです。
納税は国民の義務だけど・・・節税はルールにのっとった努力
「納税は、国民の義務。だから支払う税金を減らすような対策はせこい」
このように考えている真面目なサラリーマンの方も少なからずいますが、これは明らかな矛盾です。
なにしろ節税をしている人が「節税はずるい」と言っているのですから、ちょっとよく分かりません。
ただ、そういう方は、「給与所得控除はサラリーマンのルールで、俺の意志で決まるわけじゃないんだから、ずるいわけないだろ! お前らは自分の意志で節税してセコいやつらだ!」と反論されるかもしれません。
ただ、それは個人事業主も同じことです。「青色申告や経費で節税することは、給与所得控除同様、ルールで決まっていることなんだから、そのルールの範囲内で節税しても問題はない」ということです。
また、意志どうこうでいうなら、「給与所得控除分のお金を国へ送る・市区町村へ寄付する」という選択肢も取れるはずです。それをしないのは、結局は節税の恩恵を受けていることに変わりありません。
国は、「納税は国民の義務」といいながらも、「節税」をルールとして認めているのが現実ですし、そこにとやかく言っても、お互いに得るものはなにもありません。
領収書がネタになることも・・・?
自分が目撃したわけではないのですが、噂では、個人事業主や起業家の集まりなどでは、仕事に関する飲食の会を開いて、その領収書を景品にしたジャンケン大会みたいなことが行われることもあるそうです。
まあ、終始、仕事の話をしていて親睦を深めて・・・ということであれば、これはべつに会社でもやっていることですし、ルール違反でもなんでもないので、なんらおかしいことではないんですが、これにもなんだかなぁ・・・という感じはします。
まとめ
節税は、個人事業主だけの特権ではなく、サラリーマンも一緒のことです。また、国が認めているルールでもあります。
自分はどっちもやったことがあるから感じるのですが、とりあえず税金関連については、どちらの立場としても、あーだこーだ言い合わない方が賢明だと思います。とにかくルール通りにやっていれば、両者ともに問題なしです。(もちろん、先述したように生活費をまるごと経費にしたり、脱税というのはダメです・・・!)
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